みきけいこのフォトーク!

写真と、日々のあれやこれやのよしなしごと

「母の写真」

f:id:kikimeiko:20170201115726j:plain

 

1つ、後悔していることがある。
それが母が生きている間に、ちゃんと母の写真を撮らなかったこと。


母は写真に撮られるのが好きではなくて。

だからメイクしてお洒落して、みんなで集まるような時でもあれば…
そんな時なら綺麗に撮ってあげられるから、母も撮らせてくれるかな。

いつか機会があれば…と、そんな風に思っていた。


ただ、そんな機会を持つこともなく…
母は64歳という、亡くなるには少し早すぎる年齢で逝ってしまった。

まだまだ時間があると思っていたのに。


「腰が痛くて、仕事を辞めようと思っている」と聞いてから
2ヶ月も経たないうちに頬はこけ筋肉は削げ、見る影もないほどにやつれ…

3ヶ月経った頃には、もう亡くなっていた。
腰痛は全身に転移した癌のせいで、家族がそれを知ったのは
「余命1週間」との宣告を搬送先の病院で受けたときっだった。

もう写真を撮るどころではなかった。

 

そして、"自分の撮った、母の写真"というものは
もう永遠に実現できない夢になった。

 



よっぽどその事を後悔してたようで、1度夢を見たことがある。

亡くなる直前のモルヒネで意識が薄い状態の母が、ベッドに横たわっていて。
でもなぜか歳はかなり若返っていて、あまりやつれてもいない。

窓から差し込む光に照らされて、意味の伴わないうわ言を呟いている…
そんな母の姿が、あまりにも儚く美しく見えて。

夢の中で一眼ひっつかんで、何度もシャッターを切っていた。


現実ではなかったことを悲しむべきなのか。
それとも夢の中でとはいえ、思いを遂げることが出来たのを喜ぶべきなのか。

起きてから、少し迷った。